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成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、脳の下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが何らかの原因によって、分泌低下することで起こる成長障害です。
成長ホルモンの他にも、下垂体から分泌される下垂体ホルモンの分泌低下を伴っていることが多くあります。
成長ホルモンは骨を伸ばすために必要なホルモンであり、下垂体の分泌力が低下すると低身長になってしまいます。
分泌が盛んな学童期にあたる6〜17歳頃のお子さまでは、男児1万人あたり2.14人、女児1万人あたり0.71人という統計データ(※1)があり、男児に多くみられる成長障害です。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の主症状は、成長率の低下による低身長です。
この成長障害のほとんどのお子さまは、出生時体重が正常であることが多いでしょう。
ただ、乳幼児期の3〜4歳という早い時期から成長障害がみられ、成長率が低い場合が多くみられます。(※2)
成長曲線をチェックすると、乳幼児期からすでに-2SDを下回っている成長率となり、その後も成長率の低下が目立つようになります。
成長障害があり低身長ですが、体格のバランスがとれていたり知能は正常であったりという点は特徴です。
また、成長ホルモンの分泌不全のため、体の成熟に遅れをきたし、骨年齢の遅れも確認できるようになります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症は、先天的な原因と後天的な原因が挙げられます。
先天的の場合は、生まれつき下垂体の発達不良がみられること、遺伝子異常による遺伝性であることが考えられるでしょう。
後天的の場合は、下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫、胚芽種などの器質異常、骨盤位分娩や黄疸遷延などの周産期異常があります。
これは頭部MRI検査を行うと、下垂体の切断や下垂体低形成、異所性後葉などの器質異常がみられることが特徴です。
ただ、原因がはっきりしていないお子さまがほとんどであり、これを特発性とよばれています。
まずはお子さまの身長や体重が、同性・同年齢のお子さまと比べてどの程度なのか、身長の伸び率をしっかり確認します。
定期的に成長曲線のグラフを描き、標準偏差(SD)を用いて身長の評価を行っていきます。
この時に、SDが-2SD以下である場合や、正常範囲内のSDスコアでも1年以内の成長スピードが低下している場合は成長障害を疑い、検査を受けることになるでしょう。
検査では、手のレントゲンで骨端線の状態を確認し、骨年齢を調べます。
また、成長ホルモンの分泌を測定するために負荷試験を実施し、成長障害の他にも低身長の原因がないのかMRIや脳波、染色体検査などを行って精査します。
著しい成長障害がみられる上に家族にも同じ成長障害の方がいる場合は、下垂体の発生や分化にかかわる遺伝子群を解析することも必要になるでしょう。
このように、さまざまな検査を行い、低身長であることや成長ホルモン分泌不全であることを証明できた上で、成長ホルモン分泌不全性低身長症を確定診断します。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療は、成長ホルモン製剤の皮下注射を行うことが必要です。
この成長ホルモン製剤は、遺伝子工学的に作られた製剤であり、1週間に6〜7回ほど夜寝る前に自己注射を行います(※3)。
また、甲状腺ホルモンなどの他にも欠乏しているホルモンを補充することも低身長症の治療の一つです。
ただし、治療を開始する時期には注意が必要となり、できるだけ早い年齢からスタートする方が良いとされています。
的確にホルモン療法の効果を発揮するためには、骨年齢が10歳頃になる前に始める必要があるでしょう。
早期に治療を開始することで、骨端線が閉鎖する最終身長を迎えるまで治療を継続し、正常範囲の身長を目指していきます。
このように、成長ホルモン分泌不全性低身長症の場合は、ホルモン補充療法をできるだけ早期に開始することが大切です。
そのため、低身長が気になり始めた段階で、早めに病院で検査を受けるようにしましょう。
以下からエリア別に低身長治療を扱っている病院を探してみてください。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の男の子がホルモン注射を打つ様子などを見ることができます。